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前立腺がん

前立腺がんについて

泌尿器科部長 田村 雅人

診療部長・第一泌尿器科部長 田村 雅人

 前立腺がんは、本邦において、近年急増しており、 2020年には罹患数第 1位になると予想されています。また、死亡数も2000年と比較すると倍近くになると予想されています。前立腺がんは、早期に症状が出にくいため、以前は発見が遅れがちでしたが、PSA検査が導入されてからは、早期に発見されることが多くなりました。
 当院での5年間、約800例の前立腺生検施行者の年齢・結果を図1、表1に示します。50歳代からがほとんどで、60〜70歳代にピークがあり、80歳代の方も多く見られます。PSA が 20未満で生検を受けることがほとんどでした。また、PSA が 10 未満なら癌の確率は 20% 程度と低いですが、PSAの上昇に伴い、がんの確率も増加します。
 がんと診断された約200例で、76.3%が限局性前立腺癌、11 例のみが遠隔転移ありでした。PSA が 20 未満の症例では遠隔転移 は1例もなく、早期がんである確率が高いと考えられます。
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前立腺がんの治療

 前立腺がんの初期治療の方法として、1.手術療法、2.放射線治療(組織内照射、外照射など)、3.ホルモン療法、4.積極的待機療法、あるいはこれらの組み合わせがあります。 その他、重粒子線、陽子線治療も国内数カ所で行われています。これらをどうやって選ぶかは、年齢、健康状態、がんの進行状態などを総合的に判断し、患者様・家族の方と相談して決定します。 遠隔転移のある場合は3.ホルモン療法が第一選択となります。ホルモン療法後に 再燃した去勢抵抗性前立腺がんには化学療法や 2014 年から使用可能となったエンザルタミド・アビラテロンの投与、近年ではアバルタミド、ダロルタミドなどの新しい薬剤も使用できるようになっています。 局所進行がん(被膜外に進展)は一般的には、2.放射線療法か、
3.ホルモン療法、あるいは2と3の 組み合わせが第一選択となりますが、症例によっては、1.手術療法も選択肢となります。 限局性前立腺がんで、平均余命10年が見込まれる場合、特に中〜高リスクでは(表2)、一般的には、根治的治療である
1.手術療法もしくは、2.放射線療法を第一選択に考えますが、これらの侵襲を考え、全身状態、健康状態を考慮して、3.ホルモン療法を選択することもあります。低リスクがんは(表2)、もちろん1-3の治療選択枝もありますが、PSA値や定期的な生検で病勢の進行した時に根治治療を施行する4.積極的待機療法も選択肢となります。
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当院の治療の特徴

 当院では手術療法として手術支援ロボット da Vinci SiTMを 2014年 3 月に導入し、ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術(以下、RARP)を施行してきました。RARPは現在、全国200以上の施設で年間1万例以上行われる標準手術となっています。図2は3年間に診断し、初期治療を導入した75歳未満の転移のない方の治療内訳ですが、約3分の2の方が手術を選択されました。 2020年12月にda Vinci XTMを導入し、2021年から、新機種による手術を開始する予定です。
放射線治療は高精度放射線治療システム(リニアック)による外照射を行っています。
 

*RARPについて
 da Vinci サージカルシステムは高解像度3D 画像で視野拡大能力があり、開放 手術では死角になる部分でもカメラが繊細に映し出し、鉗子を自由に動かすことができ、手振れ補正機能を有し、きめ細やかな作業性があります。骨盤内の深く 狭い空間で手術が行われる前立腺全摘除術などにおいては、より確実な手術が可能です。 RARPは、開放手術、腹腔鏡手術に比較し、

 

* 低侵襲:出血が少ない、手術時間の短縮が期待されます。
* 制癌性:手術で癌を取りきれる可能性が高い(断端陽性率が低い)といわれています。
* 術後の尿漏れの回復が早く、症例のよっては前立腺周囲に走行している 神経や血管を温存することが可能になりますので、男性機能(勃起機能) の温存が図りやすくなることが期待されます。

 

 また、従来の腹腔鏡下前立腺全摘除術と比較して、比較的少ない症例でも、手術スキルの習得・維持が可能であると考えます。
 さらに、da Vinci XTMとなることで、術野での操作の可動域が拡大し、繊細な手術が可能となり、新しい器具の使用も可能となり、手術時間短縮も期待できます。

  • 局所癌の治療
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