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膵がん

消化器内科副部長 岡崎 三千代

第四内科部長 岡﨑 三千代

 膵がんは男性のがんによる死亡の第5位、女性では乳がんよりも多い第4位で近年増加傾向にあります。早期発見が非常に難しいため発見時にはすでに進行していることが多く、1~2cmで発見できたとしても5年生存率は約50%、2~4cmでは約15%と生存率は低く、他の臓器の悪性腫瘍と比較しても予後が悪いがんといわれています。
 しかしながら膵がんが1cm以下でみつかれば5年生存率は約80%と報告されており、早期発見が難しいとされる膵がんをいかに早期に発見するかが現在の課題とされています。一方で進行した形でみつかった場合でも最近では抗がん剤の進歩により膵がんの治療成績は徐々に向上しており、放射線療法なども併せて適切な時期に適切な治療方法を選択し集学的に治療することがますます重要となってきました。

膵がん早期発見のために
 初期の膵がんには特徴的な症状がなく、検診の腹部超音波検査で膵管の拡張や膵嚢胞性病変を指摘されたことがきっかけで診断されることが多いといわれています。このような場合まずは造影CT検査やMRI検査をおこないますが、CTやMRIで描出できない小さながんも存在するため、次の段階として小病変の描出に優れた超音波内視鏡検査をおこないます。
 また膵管に軽微な変化がみられた場合、さらに早期の膵がんが認められることもあり、必要に応じて内視鏡的に膵管にチューブを留置して膵液を複数回採取し細胞診をおこなうなどの慎重な検査をおこなっています。

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当院膵がん検査の特色

超音波内視鏡検査
 超音波内視鏡は内視鏡の先端に超音波装置を装着した特殊な構造の内視鏡で、胃や十二指腸の中から至近距離で膵臓の病変を解像度の高い超音波画像として描出することが可能です。
超音波内視鏡には大きくわけて下に示すようにラジアル式とコンベックス式があります。ラジアル式超音波内視鏡は目的の部分を360度広範囲に描出することができ精密検査に適しており、コンベックス式超音波内視鏡は目的部位より組織を採取することが可能です。
 当院では目的に応じて超音波内視鏡を使い分けており、膵がんを診断する際にはまずラジアル式超音波内視鏡を用いて膵臓全体の精密検査を行います。そして組織検査が必要な場合はコンベックス式超音波内視鏡を用い、超音波画像下で異常を認めた部位を慎重に観察しながら安全な部位から穿刺することで組織や細胞を採取します。
  •  ラジアル式超音波内視鏡全景(観察用)
  • ラジアル式超音波内視鏡全景(観察用)
  •  コンベックス式超音波内視鏡全景(穿刺用)
  • コンベックス式超音波内視鏡全景(穿刺用)

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当院の膵がんの治療方針

 膵がんの基本的な治療方法は大きく①外科切除、②化学療法、③放射線療法があり単独もしくはこれらを併用して行います。がんの進行度を病期(またはステージ)と呼び、日本では通常膵がん取扱い規約を用いて病期分類をおこないます。
病期によって有効な治療方法が異なり、StageⅠ~Ⅲでがんが局所にとどまり根治切除可能な場合は手術療法が有効ですが、StageⅣaでは根治切除困難な場合もあり化学療法もしくは化学療法と放射線療法をおこないます。
 Borderline Resectable膵がんとよばれる根治切除可能不能の境界にあるがんの場合はまずは化学療法を行い、がんが縮小し根治切除可能と判断した段階で手術をおこないます。StageⅣbで遠隔転移のある場合は化学療法を中心とした治療をおこないます。またがん治療を継続するためには全身状態を整えることが重要であり、早期より疼痛緩和などに対する治療を積極的におこない治療方針を決定していきます。

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